月経のお悩み(PMS、月経不順)
月経のお悩み(PMS、月経不順)
現代の女性は生涯で妊娠する回数が以前より少なくなっており、その分月経回数が増えています。一説では以前の10倍の約500回とも言われています。このため子宮内膜症のように月経のたびに悪化していく病気の頻度が増えています。また月経困難症によって学業や仕事がはかどらないなど、さまざまなところに影響が出てしまいます。
婦人科を受診するのに早すぎる年齢というのはありません。まだお若い方の診察の場合は内診という婦人科特有の診察をなるべく控えるよう配慮しています。初経が始まり、月経痛がつらい場合は早めに受診することで月経痛へ対処することができ、月経へのマイナスイメージを持たずに上手に付き合っていくことができます。また早くから対処することで将来の不妊のリスクも下げることもできるので、「月経がつらい」という方は早めに受診してみてください。
まず「月経=生理」というのは子宮の内側を覆う膜(内膜)が女性ホルモンの働きで厚くなり、妊娠が成立しないと不要となり血液とともに排出されるものです。痛みは子宮の内膜や血液を押し出すために子宮が収縮することで起き、これはプロスタグランジンという物質によって引き起こされます。
子宮の内膜でできるプロスタグランジンは頭痛や腰痛、吐き気といった症状も引き起こしてしまいます。
月経痛は、下腹の中心部が絞られるような痛みであることが一般的ですが違和感を感じる程度の人、仕事もできないほど痛い人、腰痛を感じる人など個人差が大きくみられます。
生理痛は通常は月経量の増える2日、3日目の時期に強く感じますが、月経の始まる直前に痛みを感じる人もいます。
月経困難症とは月経の直前または開始とともに現れ、月経が終わるとなくなる下腹痛や、腰痛・頭痛・眠気などの症状が日常生活に支障をきたすほどひどいものを言います。
毎周期、鎮痛剤が必要なほどの痛みがある場合は受診をお勧めします。
特に病気はないけれども痛みを引き起こすプロスタグランジンの量が多い、もしくはプロスタグランジンに対する反応が強いために月経困難症をおこすことがあります。若い人に多く見られますが、最近では10代から月経痛困難症がある人はどこかに子宮内膜症が潜んでいる可能性が高いことがわかっており、注意が必要です。
冷えやストレスで血行が悪くなると子宮内膜でできたプロスタグランジンという子宮を収縮させる物質が滞留し、痛みを強く感じてしまいます。
特に月経が始まったばかりや思春期に多いのが、病気があるわけではないけれども子宮の入り口がまだ狭く、そこを月経血が通るために子宮が強く収縮して痛みを感じることがあります。
子宮内膜症やクラミジアなどによる骨盤内炎症があると、癒着といって、もともとくっついていない臓器がくっついてしまうことがあり、動きが制限されるために痛みを伴うことがあります。またこの癒着に卵管が巻き込まれてしまうと、卵管の通りが悪くなり不妊の原因となることがあります。
子宮の筋肉が一部分塊のようになる子宮筋腫、子宮の筋肉の中に内膜が入り込み一部分が分厚くなる子宮腺筋症は月経困難症になりやすく、年齢を重ねると悪化するので年々痛みが悪化する場合は検査しましょう。
また生まれつき子宮が2つある(重複子宮・双角子宮)子宮の中に隔壁がある(中隔子宮)ハート型をしている(弓状子宮)などや子宮の発育が悪いといった奇形がある場合に月経痛が強く出ることがあります。これらは生まれつきのため、月経が始まった時から月経痛がひどい人は一度検査してみましょう。また、思春期の腹痛がこれらの異常を発見するきっかけとなることが多いです。
月経不順の原因を知ることで将来の不妊を回避したり、思わぬ病気やがんが見つかったり、ということもありますのでお気軽にご相談ください。
月経周期は月経の始まった日から次の月経の開始日前日までの日数を指します。正常な範囲は25日~38日で、月々の変動が6日以内といわれています。
月経周期の乱れには以下のようなものがあります。
前回の月経を覚えていないという方もいらっしゃると思いますが、それでは自分の月経周期が正しいのか早いのか遅れているのかわかりません。まずは月経の始まった日と終った日を記録してみましょう。より自分の身体のことを知るためには基礎体温を付けてみるのがおすすめです。基礎体温とは朝目が覚めてすぐにベッドから出る前に舌下で体温を測定したもので、これをグラフに記入した「基礎体温表」を作ることで排卵をしているかどうかを知ることができます。生理周期や排卵のタイミング、妊娠の早期診断や、次回の月経の予測もすることができます。
最近ではアプリで簡単にグラフを作れるものもあるので活用してみましょう。ただし、アプリでの月経予定日は今までの周期の平均から予測したものなので多少ずれることは多いです。
いつもの月経周期より遅れている場合、まさかと思っても避妊に失敗している可能性もあるので妊娠の可能性がある場合は検査薬で調べてみましょう。妊娠の可能性が全くない場合は1回だけ月経が遅れているようであれば少し様子を見ても良いでしょう。2か月以上来ない場合は受診しましょう。
月経がひと月に一回くるのは一か月に一回排卵が規則正しくあるから。約2週間後にセットになって月経がやってくるのですが、何かの原因で排卵がおこなわれない場合や、排卵に時間がかかってしまった場合、月経が遅れてしまうことがあります。
排卵がうまくいかない原因としては不規則な生活習慣やストレス、多嚢胞性卵巣といった体質などがあります。
不規則な生活やストレス下では身体は子孫を残す前にまず自分の身体を守ろうとします。そのため脳から出ている排卵を促すホルモンが出なくなります。
原因によって治療法は異なるためまずはホルモンの採血や超音波で子宮・卵巣の状態を見て原因を明らかにします。薬が原因の場合は薬を中止してみることもあれば、ストレス等が原因の場合はそのまま様子を見ることもあります。長期に月経が来ていない場合はホルモン剤を使って月経を起こしたり漢方薬によって排卵するように体質から改善していく場合もあります。
また妊娠を希望する場合は排卵を促すような薬や漢方薬で治療を行うこともあります。それぞれのライフスタイルに合った治療をしますのでお気軽にご相談ください。
「生理の量」は人と比べることはあまりないので自分で多い、少ないがわからないことも多いと思います。
月経の3日目以降もレバーのような血の塊が出てくる場合は受診をお勧めします。健康診断で貧血と言われた方も婦人科を受診してみてください。
月経前になると眠かったり、イライラしたり、不安になったり、吐き気がしたりおなかが痛くなる、など月経前の異常は最近病気として広く知られるようになりました。
PMS・PMDDは、月経の前になると決まって不快な症状が現れ、身体的・精神的に日常生活にまで支障をきたすことをいいます。精神症状が主体で強いものをPMDD(月経前気分障害)といいます。個人差はありますが月経前、3〜10日前くらいから症状が現れ、月経が始まるとともに軽くなり消失するのが特徴です。PMS・PMDDが原因で学校や仕事のパフォーマンスが落ちることが明らかになっており、人生をより快適に過ごすためにPMS・PMDDの治療は大切です。
詳しい原因ははっきりとわかっていませんが、黄体期の後半に卵胞ホルモンと黄体ホルモンが急激に低下し、脳内のホルモンや神経伝達物質の異常を引き起こすことがPMSの原因と考えられています。しかし、脳内のホルモンや神経伝達物質はストレスなどの影響を受けるため、PMSは女性ホルモンの低下だけが原因ではなく、多くの要因が絡み合って起こるといわれています。生活や仕事に影響が出るような場合は受診しましょう。
月経の3〜10日前くらいに現れるさまざまな症状のことで、個人差はありますが精神神経症状と身体症状があり、その症状は200以上ともいわれています。
情緒不安定、イライラ、抑うつ、不安、眠気、集中力の低下、睡眠障害、自律神経症状としてのぼせ、食欲不振・過食、めまい、倦怠感
腹痛、頭痛、腰痛、むくみ、お腹の張り、乳房の張り
仕事の負担を減らす、規則正しい生活、有酸素運動など生活習慣を改善することで症状が軽くなることも多いです。それでも症状が軽快しなければ、薬による治療をおこないます。症状に合わせた漢方薬を使用したり、女性ホルモンの変動が原因の一つであるため、排卵を止め女性ホルモンの変動をなくす低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤(LEP)を使用したりします。また精神神経症状や自律神経症状に対しては、神経安定剤や選択的セロトニン再取り込み阻害薬物療法を併用したりします。
皆様の症状や状況に合わせてご相談しながら治療を選択していきます。